うんちの話である。今私はうんちの話をしようとしている。食事中にスマホを開いて、うっかりここにたどり着いてしまったという方はそっとほかのページに飛んでいってほしい。ここでしっかりと心の準備ができた方のみ、下記のテキストを読んでくれると嬉しい。
――――
先日6歳になったばかりの娘は最近、インドカレー屋にある『ラッシー』という飲み物にハマっている。昨日も「ラッシーを飲みにいきたい」というので近所のフードコートに遊びに行った。しかし『子どもカレーセット』についてくるドリンクにはなぜかラッシーの選択肢がない。仕方なくドリンクをコーラにし、ラッシーもあわせて頼んだ。
娘は「ラッシーもコーラも飲めるなんて、夢みたい!」と言って、交互にドリンクを飲んだ。ほっぺたに可愛らしいエクボを作って、ニッコニコの笑顔。完全にカレーよりもドリンクを楽しんでいる。しかし15分ほど経った頃、おなかを抱えて「トイレに行きたい」と言い出した。すぐにトイレに駆け込んだが、なぜだかうまくお尻を拭けず、Tシャツを少し汚してしまった。
少しといえど、うんちである。そのまま遊び歩くわけにはいかない。ランチのあとは川沿いを散歩するつもりだったが予定を変更し、「そのままでは遊べないから帰るよ」と娘に伝えた。
トイレを出てフードコートの席に戻る。皿を片付けていると、ラッシーが半分以上残っていた。「ラッシーはもういいの?」と娘に聞くと「だって、ラッシー大好きだけどそのせいでおなか痛くなっちゃったから……」という。あ、そうだったんだ…と間抜けなことを思っていたら、ションボリしながら娘が「楽しんでいただけなのに、こんなことになってしまうなんて……」と呟いた。
それが、めちゃくちゃ可愛かった。あんまりにも可愛くて、胸がぎゅっと締め付けられる。大好きなラッシーを飲んで楽しんでいただけなのに、うんちが服について帰ることになってしまうなんて。まさにその通りである。私は娘の言葉を聞いて予定変更を取り消し、すぐに近くの子供服売り場で洋服を購入した。Tシャツを着替えさせ、汚れた服はトイレで洗ってビニール袋に入れ、入念にアルコールスプレーを振りかけた。それから、うんち服を持ち歩きながら川沿いを散歩した。
娘はまた笑顔になって、可愛いエクボを見せた。彼女は「ママと2人は一番楽しい」と、何度も言う。ちゃんと予定通りお散歩ができてよかった。
帰り道、少しだけスーパーで買い物をした。一通り野菜のコーナーを眺めたあと、牛乳とヨーグルトのコーナーにさしかかった。そのとき急に、お利口に後ろをついてきていた娘が前のめりになった。「このコーナーには白い飲み物がたくさん並んでいるから、ラッシーがあるかもしれない!!ママも一緒に探して!!」。彼女は全く懲りていない。
帰宅後、「パパとにーにには内緒にしといて。この服はただ可愛かったから買ったって言って!」と、アリバイ工作をする娘。私は言われた通り誰にも何も話さなかった。
けれど聞こえてしまった。娘が夫に話をしているのが。「今日はラッシーとコーラのせいでブリブリうんちが止まらない!!どのタイミングでお尻拭いたらいいのか全然わからない!!!」。
彼女は「ブリブリ」という効果音を何度も使い、面白おかしく今日の出来事を語っていた。夫は娘につられて、腹を抱えて笑っている。
娘、実は内心、うんちが服について「これはおいしい」と思っていたんじゃないか。だとしたら天才だ。生粋のエンターテイナーの誕生である。