2021年の9月に新型コロナウイルスのワクチンを打ち、親子でワクチン後遺症になってしまった。経緯については別の記事に書いてきたので割愛するが、今回は後遺症の社会復帰に効果的だった『加圧トレーニング』について情報を共有する。
なお、ワクチン後遺症(ワクチン長期副反応)とコロナ後遺症は症状がかなり似通っているため、ここでは『後遺症』と表記統一させていただく。
後遺症の症状および治療についてはこちらの記事『ワクチン長期副反応・コロナ後遺症の治療について』に詳しく書いているので、興味がある方は読んでみてほしい。
PEM(労作後疲労)とは?
前提として、後遺症にはPEMと呼ばれる『労作後疲労』がつきものだ。労作後疲労とは、ちょっと無理をして動くとその後とてつもない倦怠感が襲ってきて動けなくなってしまう、非常に厄介な性質の症状を指す。こちらは激しく笑う、泣くなどの感情の変化でも起きる。
コロナ後遺症治療の第一人者である『ヒラハタクリニック』の平畑先生も「一番大切な大原則はだるくなることをしない」とおっしゃっており、まずは動かないようにしている患者も多いと思う。しかし、どのタイミングで動けるようになるのかわからず、「いつまで寝てればいいのか!?」と不安になる方も、同じく多いと感じている。
加圧トレーニングとは、腕や脚のつけ根を専用のベルトで締めつけ加圧し、血流量を制限した状態で行うトレーニングのことだ。
なんでも、後遺症患者向けに加圧トレーニングを行ったところ、PEMが起きず、その後動けるようになった方が多かったという。おそらく、加圧しながらのトレーニングは「きつい」と脳が勘違いしているだけで、実際に大きな負荷がかかっているわけではないのではないか、と語られている。
加圧トレーニングをやった結果
実は私は偶然にもこの情報を得る前からジムで加圧トレーニングを行っており、トレーニングをやっていない息子よりもはるかに体調がよくなっていた。この情報を知ったとき、すぐに息子にもやってもらおう!と思ったが、当時はあまり外出できるような状態ではなかった。そういった経緯から、なんとか外出せずに、自宅で加圧トレーニングができるよう環境を整えた。
朝と晩、毎日加圧トレーニングをやってもらったところ、1ヶ月ほどでPS値は5から2へと変化した。
ここからは独自で集めた『自宅での加圧トレーニング』についての情報を記す。ただし、後遺症は非常にセンシティブな病気ゆえに、かかりつけの内科や整形外科、後遺症外来等で相談の上、慎重に進めてみてほしい。外出が可能な方は、『加圧トレーニングジム』や『リハビリテーション』でのトレーニングを検討するのもよいと思う。
PS値とは?
まず、「いつから加圧トレーニングをやっていいのか?」という指標についてざっくりと説明する。
厚労省では慢性疲労症候群の患者向けにPS値(パフォーマンスステータス)という数値が設定されている。どの程度生活ができるかの数値を示すものだが、こちらが後遺症患者にも同様に使われている。具体的には下記。
日常生活や労働等のパフォーマンスステータス (PS値)
0:倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、倦怠感を感ずるときがしばしばある。
2:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠の為、しばしば休息が必要である。
3:全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
4:全身倦怠の為、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
5:通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6:調子のよい日は軽作業可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。
7:身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、通常の社会生活や軽作業は不可能である。
8:身の回りのある程度のことはできるがしばしば介助が要り、日中の50%以上は就床している。
9:身の回りのことはできず、常に介助が要り、終日就床を必要としている。
PS値が0~5(軽症)、6~7(中等度)、8~9(重症)の3群に分けられる。
参考:『慢性疲労症候群患者の日常生活困難度調査事業』https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000104377.pdf
息子は2022年1月に大クラッシュを起こし、トイレ以外は寝たきり、食事もほとんどとれないような状態になった。そのときをPS値9とすると、加圧トレーニングを始めた8月頃はPS値4~5くらいであった。具体的には、学校には行けないが、ゲームはできるような状態だ。つまり、好きなことなら座っていられるようになったら、加圧トレーニングを開始していいと考えている。
自分の体調を詳しく知る方法
先ほど「加圧トレーニングはかかりつけの医師に相談しながら進めてほしい」と書いたが、かかりつけの医師が患者の体のことをすべて知っているわけではない。自分自身の体のことは自分で把握するのが最も大切だ。なるべく日常的に自身の体調の変化をキャッチしてほしい。
息子の場合は、先ほどのPS値に加えて、『酸素濃度』および『脈拍』、『血圧』の変化をグラフにして記載し、少しでも体調が悪い・数値に異常がある日はトレーニングを控えるなどの対策を取った。
また、加圧トレーニングの前後に『酸素濃度』の数値を測って変化を記録することで、「数値の変化が少なくなったらトレーニングのレベルをあげる」ことの指標とした。
加圧トレーニングに必要なグッズ
トレーニングを始めるにあたって用意するものは、初心者は最低限の加圧ベルトのみでよい。脚用と腕用が4本セットのものがおすすめだ。息子が使用しているものはこちらのベルト。
トレーニングベルトには、電動のものや、強い圧力をかけられるものなど様々な商品がある。しかし私たちはアスリートになりたいわけではなく、日常生活に復帰したいだけの後遺症患者なので、初心者用で十分だと感じている。
※ただし、中には詐欺のような商品もあるそうなので納得のいく調査を!
次に、ダンベル。こちらは2Kgのものを2つ使用している。ただし、最初から揃えなくとも、ペットボトルなどで代用することも可能だ。ダンベルを使用しないメニューもあるので、まずはベルトを購入後、続けられそう&効果があると感じた方だけ購入でもいいかもしれない。
加圧ベルトの巻き方
加圧ベルトの巻き方には少しコツがある。下記、腕と足に分けてテキスト化したが、動画を見た方がわかりやすいと思うので、参考動画を見て調節してみてほしい。
■腕の巻き方
肩の筋肉と腕の筋肉のちょうど真ん中くらいにベルトを巻く。筋肉の上には載せない。ベルトの間に指が一本入るくらいがベスト。適切に巻かれていれば、手のひらが赤くなるので、指で押して白くなって赤く戻る状態。手のひらを握りしめた後、開く(ジャンケンのグーとパー)と、一瞬白くなるが、すぐに赤みが戻ることを確認する。
ベルトがきつすぎる場合は手のひらが白くなり、なかなか赤みが戻らない状態になる。この状態は止血傾向にあり危険なので、必ず巻き直してほしい。きつくても効果があがるわけではないので、適切な状態を覚えること。
参考動画URL:【加圧ベルトの巻き方・使い方】自宅で加圧トレーニング
足
基本的には腕と同様。お尻の筋肉と太ももの筋肉の間(足の根本)に巻く。ベルトを上に引っ張って、張力を一定に保つ。きつすぎる場合は必ず巻き直すこと。
参考動画URL:【自宅で加圧トレーニング】加圧ベルトの巻き方・使い方 脚編
トレーニング・メニュー
メニューは、私が通っていたリハビリテーションの理学療法士さんに考えてもらった(いい人!)。
最初は朝と晩にレベル1のみをやっていた。慣れてきたらレベル2を追加し、周回した。また、前述の通り、トレーニングの前後で酸素濃度を測り、数値が安定しているようであればトレーニングのレベルをあげていった。息子は鈍感なほうで、自分の体調の変化があまりわからないタイプなので、数値で目に見えるのでわかりやすかったようだ。
■レベル1:腕
腕:椅子に座ったまま、手を開いたり閉じたり(ジャンケンのグーとパーを繰り返す)する。10回。
参考動画URL:【加圧トレーニング】10分でできること
(余談だが、色々動画を見た中でこの人が一番わかりやすくて好きだった。笑)
■レベル2:腕
椅子に座ったまま、ダンベルを持ち上げる。10回。
※ダンベルは2kg。体力に自信のない方やダンベルなしで試しにやってみたい方は、飲料の入った500mlのペットボトル(500g)でもよいと思う。
■レベル3:足
椅子に座ったまま、足の指をギュッと閉じたり、開いたりする(足でジャンケン。グーとパー)。10回
参考動画URL:アスリートのための加圧トレーニング基礎メニュー下半身編
■レベル4:足
椅子に座ったまま踵をあげたり(つま先立ち)、下げたりする。10回。
■レベル5:足
立ったまま、踵をあげたり(つま先立ち)下げたりする。10回。
一通りやれるようになったら回数を増やす。息子は現在は朝・晩レベル1~5までを全てやっており、学校にも通えている。
加圧トレ以外にやったこと
念のため、社会復帰に向けて加圧以外にやったことをまとめておく。こちらは別記事に詳細に記載している。
・漢方内科への通院。細かい体調の変化にあわせて漢方薬の処方をしてもらう。SNSを見ていると市販の漢方を取り寄せている方も多いが、処方薬となると月々の負担額が半額以下になる。後遺症の症状がある方は保険適用可能なので、漢方内科をおすすめする。後遺症に関する知識のない医師であっても、「雨の日に倦怠感が強くなる」「お腹を壊しやすい」「頭痛がある」などの症状を話すと漢方を処方してもらえる。
・Bスポット治療(EAT療法)。後遺症の方は慢性上咽頭炎であることが多いと言われている。その場合Bスポット治療はマストと言える。人によっては非常に苦痛を感じる方も多いようなので、ご自身の心身とご相談しつつすすめてみてほしい。
・糖質制限。糖質をとると倦怠感が強くなるため、治療の間は制限をしている。こちらもかなり重要と感じる。実は息子にはPS値の説明をしてもわかりにくいと感じたので、「一番しんどかった1月を辛さ10としたら、今日はどのくらい?」というように、毎日数字を聞いていった。そうすることで、高校生の息子にも「糖質をとったあとは明確に体調が崩れる」と理解してもらった。
・鍼治療。息子は痛みが苦手なので、痛くないと言われている東洋はりの検索サイトから探した(リンクはこちら)。週1で通院しており、行った日は私から見ても声にハリがある。本人は頭痛が軽減すると言っている。ちなみに私も治療中色々通ったが効果は「??」だったので、かなり相性があるようだ。
おわりに
私は医療従事者ではない。あくまで後遺症当事者およびその親としてやったことを記している。そのため、「これをやったら絶対に治るよ!」「社会復帰できるよ!」というわけではない。我が家に関しては効果があったよ、という個人のケースであると、ご理解いただきたい。
また、後遺症治療中は、周囲の医師・看護師・理学療法士・アスリート・保健師・整体師など、とにかく専門知識を持っている人に、相談しまくっていた。その中で得た知識も非常に多い。後遺症が大きな社会問題となっている今、インターネット上だけでなく、オフラインで相談できる環境を作れることも大事なのかなと思う。
みなさんが元気になりますよう!!
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過不足・間違い等あれば追記・修正をするので、何かあれば、ご指摘のほど、どうぞよろしくお願いいたします。