思うこと

八方美人をやめた日。

 スマートフォンに入っている連絡先を全部消した。もともと誰からの電話も出ないし、LINEとメール、Slackがあるのでどうにかなるだろうと思った。それからFacebookとLINEの友達を200人くらい削除した。いつの間にか、友達じゃなくなっていたんだと思う。

――――

 断捨離のつもりだった。ふんわりとした焦燥感のようなものを感じながら人差し指を動かした。半年くらいかけてじわじわとすべてのSNSから色んな人を消していく作業。削除したのは見ていると悪口が出てしまう人と、その周辺の人。完全に私の器の小ささが原因だ。一方的に拒絶してしまい申し訳ないが、自分にとって必要な選択だった。しかしスマホの中だけで絶縁が完結するなんて何かのゲームみたいだなと思った。

 気が付いた一部の人の中には、猛烈に怒ってくる人、電話番号のショートメールを送ってくる人、直筆の手紙を送ってくる人などがいた。嫌いになったとかではなく、とにかく多くの関係性を断ちたかったので申し訳ないがスルーさせてもらった。ショートメールに関しては登録をしていないので誰だったのかすらわからない。

 八方美人だったと思う。誰にでもいい顔をしたし、誰とでも仲良くした。嫌なのに無理矢理仲良くしていたというわけではなかったが、あらゆる違和感には蓋をしていたと思う。八方美人でいることで、いいことというのはほとんどなかった。いつもニコニコしていたからか、距離を置こうとするとめちゃくちゃ怒ってくる人というのが本当にたくさんいた。何に対して怒っているのかよくわからないが、とにかく温度が違う、とよく思った。

 これは主観だが、他人に怒る人というのがあまり理解できない。家族ならわかるが、他人である。怒りを他人にぶつけて何か改善するということはあるのだろうか。そんな経験がないのでよくわからない。少なくとも今までの人生で、怒られて何かが変わったことなんかひとつもなかった。だからやっぱり、削除してよかったのだと思う。価値観が違うから。

――――

 人にはステージがあるという話を聞いた。それが高いとか低いとかではなくて、とにかく色んなステージで似たような人が一緒にいるらしい。だから、前のステージの人たちとずっとずっとがんばって仲良くする必要はないのだと。

 最後に削除したのは20年近く仲良しだった子だった。さすがにそのときばかりは感情が動いた。距離を置きたいだけなのに、何度も理由を聞いてくるからちょっとビックリした。けれどこちらの違和感を伝えてしまうと、彼女の生活や人格を否定してしまうことになると思った。だから何も言わなかった。そのままブロックにまで至ったのはちょっとだけ寂しかった。
 他人に「あなたのここに違和感があるよ」と直接伝えるのは、優しさだと思う。相手とまだ関係性を続けるための優しさ。そういうのが私にはもう残ってなかった。

 誰に言い訳をしているのかわからないが、なぜだかどうしても書きたかったので備忘録としてこれを残す。読み返してみると自分でも勝手だなと思う。けれど、自分勝手でいいと思う。人生は私が作るものだから。

 ちなみに、めちゃくちゃスッキリした。

――――

なぜこうするに至ったのかという話。

ABOUT ME
ichinooikawa
編集・ライター・ステップファミリー・ホームパーティーマニア。猫と夫と息子と娘。20時以降は飲酒している。夫と漫画が大好き。