思うこと

他人の体調不良を自分語りのきっかけにするな

 新型コロナワクチンを打って心筋炎を起こしてから、3か月が経過した。心臓とは別の不調も含めて、体調はかなりよくなった。現在は、2か月間の寝たきり生活から復職し、普通の生活を送っている。しかしワクチン後遺症なるものは一進一退、よくなったり悪くなったりを繰り返すらしい(ソースはわたし)。

 昨日は普通に生活できていたのに、翌日には立ち上がれないくらいの倦怠感に襲われて動けなくなったりする。メンタル強めの人間として生きてきた自分だが、さすがにそんな日は落ち込む。

 倦怠感発生から5時間も経過すると、弱気になりTwitterでツイートをしてしまう。「誰かに共感してもらいたい」「ひとりじゃないと思いたい」、そんな気持ちになるのだ。

 先日こちらのツイートをしたところ、そりゃあもう盛大に心配してもらった。しかし、同じようなワクチン後遺症の方たちの「わかる、寒いときついよね~」という共感リプライではなく、おそらく陰謀論者と呼ばれる方たちの謎リプが9割だった。

善意の塊である陰謀論者たち

 陰謀論については様々なメディアで触れていたので、多少なりとも知っているつもりだったが、実際に中の人と接するのは初めてだ。とにかくみんなして文章構成がおかしくて驚いたが、率直な印象として「この人たち本当に善意で話しかけてきているんだ!!!」と、感じた。

 心の底から「よかれ」と思って発言をしている。本当に私の体調を気遣っていることは伝わってきた。しかし内容はかなりズレており、こちらのニーズには合っていないものばかりだ。

 そもそもリプを送ってきた人は、ワクチンを打っていない人ばかりだった。彼らはこぞって「後遺症にはこれが効く!」とあらゆるアイテムを勧めてきたが、なぜそれがワクチン後遺症に効くとわかったのか。根拠を教えていただきたいものである。

「解毒してください、次は死にます」とか、「アルミ缶に銅線を巻いたものを部屋に置いてください」とか、体調が悪くて寝込んでいると言っている人に対して、正気の沙汰ではない。

 挙句の果てに、最近の陰謀論界でトレンドらしい「重曹とクエン酸」をめちゃくちゃ勧められる。年末の大掃除じゃないんだぞ、わしゃキッチンか

小1娘の「いいこと教えてあげる」

 少し話が逸れる。

 私には小1の娘がいる。娘は小学校で得た情報を、「いいこと教えてあげる!」と言って毎日のように教えてくれる。内容は「今学校で練り消しが流行っているんだよ」「算数の次は数学になるんだよ」など、おおよそどうでもいい話ばかりである。

 しかし小学1年生といえば就学したばかりで、目に映るすべてのものが新しく輝いているであろう年頃だ。「今日知ったいいことをママに話したい」という娘の気持ちは非常に愛らしく、いくらでも聞いていられる。

 この先娘は成長し、「この情報はママなら知っているだろう」「ママは今体調が悪いから無理に話すのはやめよう」などと考え始めるだろう。何なら、後者に関しては今でもかなり出来ている。つまり、「いいことを教えてあげる」は、今後なくなっていくことが予想される。

 これは尊い成長であり、育児のせつない側面でもある。

 話を戻す。

 私は娘に限りなく近いものを陰謀論者たちに感じた。「これは私にとって有益だからあなたにとっても有益でしょう」という幼さが見えるのだ。他者の問題と自分を混同してしまっている。「他者の問題は、自分の問題ではない」ということを理解できていない。他人との境界線が曖昧という言い方をしたほうがいいかもしれない。

 自分=他者ではない。この図式は他者との触れ合いを通して学んでいくものだ。その学びがないと、どんなにか生きづらいだろうと思う。

陰謀論を否定したいわけではない 

 陰謀論を否定したいわけではない。12月22日に何かあると思って生活するのはワクワクするのかもしれないし、コロナ禍を乗り切るには何かを強く信じていないと辛いのかもしれない。何を信じてどんな手段を使って生きていこうと、他人の自由だ。好きにしたらいい。

 ただ、「他人の体調不良を自分語りのきっかけにする」。

 これがシンプルに失礼な行為だということは、覚えておいてほしい。つまり君たちが今回私にしたことは失礼ですよ、という話である。

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 長くなってしまったが、私の願いはワクチン後遺症の解析・理解がすすみ、治療方法が確立されることのみ。しっかりとした補償の上で、医療機関での適切な治療を望む。それは間違っても、重曹とクエン酸ではないことは確かである。

ABOUT ME
ichinooikawa
編集・ライター・ステップファミリー・ホームパーティーマニア。猫と夫と息子と娘。20時以降は飲酒している。夫と漫画が大好き。