思うこと

太田光になりたい。

吾輩はギャルである。10代のころ、浜崎あゆみが大流行し、若い女性たちには呪いがかけられた。

ギャルの呪いだ。その呪いはいまだ解けることはなく、もうすぐ35歳になるというのに、ナチュラルメイクのやり方がわからない。年相応に2児の母になったはいいが、いつまでもギャル。それが昭和61年生まれ。呪われし古参のギャルである。

ここまで書いて、「自分だけじゃないよね?」と不安になり、同級生のギャルに確認を取ったが「わかる、マジ参観日あーしだけカラコン。わら」と返事が返ってきた。ウケる。

トークバラエティー『太田上田』を見る

さて、本題に入る。ここのところ、中京テレビのバラエティー『太田上田』ばかり見ている。爆笑問題の太田光さんと、くりぃむしちゅーの上田晋也さんのトーク番組だ。YouTubeにアップされたものは全部見たし、Huluに入会し、5年分すべてを遡った。

それから、いつしか私は強烈に太田光という人間に惹かれるようになった。
35歳ギャル、太田光になりたい。

正直、太田さんのことはよく知らなかった。爆笑問題というコンビであることくらいしか情報はなく、おそらく喋っているところをちゃんと見たのも『太田上田』がはじめてだ。

「ウーチャカって誰なんだろう?」「なんでぴーちゃんって呼ばれてるんだろう?」「太田さんは誰に憧れて芸人さんになったんだろう?」などなど、気になったことは全て調べた。そこから派生して、『太田伯山』、『爆笑問題カーボーイ』、『おぎやはぎのメガネびいき』、『ハライチのターン』、『伊集院光 深夜の馬鹿力』まで、全部耳を通した。とにかく太田さんにまつわる話は全部聞きたかった。もちろん、『文明の子』と『芸人人語』もすぐに読み、強く感銘を受けた。

これを恋と呼ぶのかといわれれば、それはまた違った。どちらかというと、憧れに近く、「自分もこうなりたい」というような感情だ。名前はまだない。

太田光という人

太田さんの何が好きなのかとたずねられれば、人間に対する愛が大きいところと答えるだろう。太田光という人間は、とにかく人間愛が強いと感じる。誰にでも、どんな人にでも救いを残すのだ。

恐らくラジオリスナーや、太田さんのファンの人たちには周知の事実だろう。いちいち言葉にする必要もないようなことなのかもしれない。けれど、お笑い好きの夫に「爆笑問題の太田さんのことがすごく好きなんだ」と話すと「どこがいいの? 急に大きな声を出す変な人でしょ?」というようなことを言われた。

お! おみゃあは何もわかってねぇど! 私の太田さんの話を聞け!!

ということで現在、何かに駆り立てられるようにこのテキストを書いている。

確かに太田さんには変なイメージがある。変なイメージというか、おそらく本当に変なことをしているのだと思う。元々あまりテレビを見ないので、詳しく書けなくて申し訳ないが、太田さんの破天荒な動きや、大声で誰かを罵るような芸風が切り取られて誤解されているのだと思う。

お笑いには型があり、型破りにやったものが滑ってしまったものだとか、その時々だと思うが、とにかく何かしら世間に受け入れられないようなことがたくさんあったのだろう。事実、私ももともとあまりいい印象は持っていなかった。というかお笑いの文化自体「自分には合わなそうな文化だな」と思っていた。誰かを嘲笑うような形や、欠点をからかうような形を、私は好きになれない。おそらくそれは一生変わらないだろう。

けれどそれでいて、私は太田さんが大好きなのだ。知れば知るほど、「この人は全部わかった上で、お笑いという文化を愛し、いまだ進化し続けているのだな」と思う。ベースにはやはり強い人間愛が見える。そこに惹かれているファンは多いはずだ。

“へずまりゅう”だって救われる

ひとつ、エピソードを紹介する。

ラジオ『爆笑問題カーボーイ』では、毎週芸能ニュースなどから、キャッチーなトピックスをいじってスタートする。私が毎週楽しみにしている点だ。世間で何か起きると、「太田さんはこのことについて何を話すのかな。どう思っているのかな」などと考える。カーボーイを聞くことで、人生はほんの少し豊かになる。

2021年6月22日のカーボーイの冒頭で、太田さんは『へずまりゅう』の話に触れた。

へずまりゅうとは、迷惑系ユーチューバーと呼ばれている人物だ。お店の刺身を購入前に食べてしまったとかの罪で逮捕され、現在裁判にかけられている。確かその前にもコロナになったまま出歩いたりしていた、とにかくちょっとアレな人だ。

冒頭を少し抜粋する。

田中裕二「どうもみなさんこんばんは。爆笑問題田中裕二です」
太田光「へずまりゅうです(涙)」
田中「夕方やってたね、ニュースでね。笑いごとじゃないんだけど(笑)」
太田「泣いちゃったの(笑)」
田中「初公判ね」
太田「黒歴史だってね(笑)」
田中「何が黒歴史だよ(笑)」
太田「これからだよ。いくらでもやり直し効くからさ。泣くこたぁないよ」

TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』より

ちょっ、マジ太田さんの人間愛、やばくない??? えぐくない??? 

あまりの尊さに語彙力が急逝する。太田さんは、このような感じで、いつも誰にでも救いを残す。自分にはできないなと毎度思う。

へずまりゅうには申し訳ないが、自分は面倒くさい人間には関わりたくないと思ってしまう。何なら、「何かの病気なの? 救いようがないな」とまで思ったりする。

差別意識と理想と

話が少し逸れる。「なぜ太田光になりたいのか」という話をするには、自分の中の差別意識について話さなければならない。

まずはっきりと、自分はあらゆる差別をなくすべきだと考えている。けれどその上で、自分の中には「差別意識」があるな、と思う。情けない話ではあるが、自分の中には他者に対する同情心があるし、優劣をジャッジするような醜い癖がまだ残っている。それは前述したへずまりゅうに対する感情と同等のものだったり、些細なものだったりするのかもしれない。けれどその内容については絶対に書けない。差別心を持っていながら、自分が「差別する側」に立ちたくないという卑怯な思いがあるから。

誰もが抱えているであろう感情、あるいは葛藤といえるかもしれない。けれど、太田さんにはそれがないように見える。つまり太田光は、私の理想の生き方をしているのだ。強烈に羨ましいと思う所以である。きっと、私よりも遥かに想像力がある人なのだ。それも、とても優しい想像力だと思う。

こんなことを言ったら、くりぃむの上田さんに「あんたの分析すべて間違ってるよ!」と突っ込まれそうだ。だが、これが勘違いであってもいい。一視聴者にそう見せることができていることが、もうすでに憧れる。

私は、太田光になりたい。

推しがいることで人生は豊かになる。

長くなってしまった。夫に、そしてどこかの誰かに、太田さんの素敵な一面が少しでも伝わると、嬉しい。

私は、太田さんを推していることで視野が広がったと感じる。太田さん好きが高じて、初めて落語を見に行ったことだとか、お笑いに興味が出たことだとか。

とにもかくにも太田さんのおかげで、人生は豊かである。ありがたい、ありがたい。

最期に、おすすめの『太田上田』動画をひとつ。

どうでもいい話を、ここまで面白く話せる、やはり太田さんは豊かだ。

ABOUT ME
ichinooikawa
編集・ライター・ステップファミリー・ホームパーティーマニア。猫と夫と息子と娘。20時以降は飲酒している。夫と漫画が大好き。